筆界特定事例集2 2014年12月刊
筆界特定事例集3 2017年9月刊
「申請人及び関係人の主張及びその根拠→筆界の検討→結論」
の流れを紹介した事例集
【はしがき】
筆界特定制度は,平成18年1月20日に運用が開始され,およそ5年が経過しようとしていますが,現在までに,当初の予想を大きく上回る件数が申請され,今後も全国的に高水準を維持することが続いていくものと思われます。このことは,本制度に対する国民の信頼と期待の高さをうかがわせるものであり,この付託に応えるために,より一層適正かつ迅速に筆界特定手続を進めていく必要があります。
そのためには,本制度の両輪である筆界特定登記官と筆界調査委員の強い連携が求められるところから,法務局と筆界調査委員の選出母体である土地家屋調査士会,司法書士会及び弁護士会との協力関係を引き続き維持する必要があります。
また,本制度が国民にとって更に利便性が高く,かつ,効果的であるためには,土地家屋調査士会ADRを始めとする他の制度との連携を高めることが不可欠であり,今後,これら制度相互のシナジー効果が期待されるところです。
ところで,筆界は,「公法上の境界」であり,その概念が不動産登記法(第123条第1号)に規定されていることから,明治以来の不動産登記制度にその基礎を置くことは論を待たないところです。したがって,筆界の特定に当たっては,表示登記に関する制度やその変遷に対する十分な理解と,土地台帳,登記簿,地図,地積測量図等の資料を的確に読み解き,整理する専門的知識による理論構成が必要になりますが,加えて,地勢や周囲の状況だけでなく,地域的慣習などによる事情を斟酌できる豊富な経験を求められることがあります。
本制度の発足から年数が浅いこともあり,筆界特定に至るまでの道標は必ずしも明確に確立されているとは言えないところではありますが,本書で取り上げた事例は,歴史ある登記制度の運用により蓄積された知見を縦横に駆使し,筆界を特定したものであり,類似の事案を考察するための参考となることを期待しています。
なお,本年は表示登記制度が発足して50周年に当たっており,その記念すべき年に本書を発刊することは,大変意義深いことと考えています。
平成22年11月
東京法務局不動産登記部門地図整備・筆界特定室