戸籍行政をめぐる現下の諸問題
長橋佑里香(法務省民事局戸籍企画官兼局付)
は し が き
去る令和3年12月11日、「家族法・戸籍制度研究会」の第41回定例 研究会が、日本出版クラブ会館(東京都千代田区)におけるご講演と 同時配信によるオンライン講演の形で開催されました。
今回の研究会では、法務省民事局戸籍企画官兼局付の長橋佑里香氏 から「戸籍行政をめぐる現下の諸問題」と題する講演が行われました。
今回の講演におきまして長橋局付は、まず、「無戸籍の解消に向けた取組について」、現状のご報告とともに、その対策として、無戸籍 問題の一因との指摘も受けながら見直しの検討が進められている民法 における嫡出推定制度について、法制審議会民法(親子法制)部会に おける調査・審議の状況を、部会資料等の関連資料とともに分かりや すくご解説くださいました。講演では、嫡出推定制度の見直しの議論 に焦点を絞りつつも、認知制度の見直しなどの重要な他の議論についても触れられています。
そして、戸籍行政にかかわる大きなトピックとして、「氏名の読み 仮名の法制化について」、現行制度の概要と、デジタル・ガバメント 実行計画に紐づけられた法制化の必要性や今後の工程について、さら に具体的な議論内容については、法制審議会戸籍法部会における調 査・審議の状況も踏まえて、丁寧にご解説をいただきました。
今後も、これらのテーマも含めて家族法・戸籍制度に関する様々な 課題について検討や議論がますます進められていくと推察されるとこ ろ、本講演で行われた長橋局付の解説につきましては、戸籍実務に携わっておられる方々をはじめとして、家庭裁判所の職員の方々、家族 法及び戸籍制度の研究に当たっておられる方々にとっても裨益するところが少なくないと思われます。そこで、今回の戸籍時報特別増刊号においても、講演者及び家族法・戸籍制度研究会のご了承を得て、そ の講演内容を掲載させていただくこととしました。
なお、ご講演後、本誌発刊までの間、去る令和4年2⽉1⽇には 「民法(親子法制)等の改正に関する要綱案」が取りまとめられましたので関係資料として本誌にも掲出いたしました。
終わりに、本書の編集に際し「家族法・戸籍制度研究会」の格別の ご配慮に対し、厚く御礼申し上げますとともに、本書が読者の皆様の ために多少でもお役に立てれば幸いでございます。
なお、読者の皆様には、「戸籍時報」及び同増刊号の編集について、 今後ともいっそうのご指導、ご鞭撻をいただきますよう、お願い申し上げます。
令和4年5月
戸籍時報編集部