戸籍時報 2021年11月特別増刊号vol.817

本体 ¥ 1,200
¥ 1,320 税込

著者:戸籍時報編集部/編
判型:A5判
ページ数:116頁
発刊年月:2021年11月刊
ISBN/ISSN:0912-1579
商品番号:31101
略号:時特

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商品情報

ハーグ子奪取条約の運用と実務
~現状と課題~
橘高真佐美(弁護士)

は し が き

 去る令和3年6月9日,「家族法・戸籍制度研究会」の第40回定例研究会が,日本出版クラブ会館(東京都千代田区)でのご講演およびオンラインによる同時配信の形で開催されました。今回の研究会では,弁護士の橘高真佐美先生から,「ハーグ子奪取条約の運用と実務~現状と課題~」と題する講演が行われました。

 今回の講演におきまして橘高先生は,日本においても2014年1月24日に批准し,同年4月1日に発効した「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」(ハーグ条約)及びその国内実施法である「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律」(実施法)の概要と,条約発効後7年間における本制度の運用状況として,日本における返還援助や面会交流援助の申請件数や裁判の動向,執行状況等について,実際に事件を受任された豊富なご経験・ご見識から,豊富な資料とともに分かりやすくご解説をいただきました。特に注目される点のひとつである子の引渡しの執行に関しては,家事事件手続法の改正のご解説も含めて丁寧にお話しされています。

 また今回は,橘高先生が実際に受任され支援を続けていらっしゃるケースについて,当日のご講演におけるご紹介だけでなく,本誌での実例紹介のために特別に,当事者からの特別寄稿をいただきました。子どもに寄り添った事案の解決のために当事者が乗り越えなければならなかった困難や長期的な取組等について,ご経験者にしか語ることができないメッセージを,ぜひお読みいただければと存じます。

 本講演で行われた解説につきましては,戸籍実務に携わっておられる方々をはじめとして,家庭裁判所の職員の方々,家族法及び戸籍制度の研究に当たっておられる方々にとっても裨益するところが少なくないと思われます。そこで,今回の戸籍時報特別増刊号においても,講演者及び家族法・戸籍制度研究会のご了承を得て,その講演内容を掲載させていただくこととしました。

 終わりに,本誌の編集に際し「家族法・戸籍制度研究会」から賜りました格別のご配慮に対し,厚く御礼申し上げますとともに,本誌が読者の方々のために多少でもお役に立つことができれば幸いです。

 読者の皆様には,「戸籍時報」及び同増刊号の編集につきまして,今後とも一層のご指導,ご鞭撻をいただきますよう,お願い申し上げます。

 令和3年11月
戸籍時報編集部

目次

第1部 講  演
 ご挨拶
 はじめに
 第1 ハーグ子奪取条約とは
  1 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約
   (1) 条約の目的
  2 国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律
   (1) 中央当局 ─外務大臣(3条)
   (2) 外務大臣への援助申請
   (3) 子の返還命令
   (4) 面会交流 ─管轄の特則(148条)
   (5) 総合法律支援法の適用に関する特例(153条)
 第2 ハーグ子奪取条約の日本での実施状況
  1 外務省ハーグ条約室ホームページ
  2 国会報告
   (1) 返還援助申請
   (2) 返還援助決定
 第3 インカミング返還事件(他の締約国から日本への連れ帰り等)
  1 返還命令申立事件の手続 ─審理期間(6週間モデル)
  2 審判・調停期日
  3 ADR╱調停による解決 ─事件終了後の面会交流の実施の難しさ
  4 執 行
   (1) 出国禁止命令
   (2) 旅券提出命令と返還命令決定後の旅券の返還
   (3) 間接強制・代替執行の限界と人身保護請求
   (4) 終局決定の変更(実施法117条)
 第4 アウトゴーイング事件(日本から他の締約国への連れ去り等)
  1 返還命令
   (1) 「ミラー・オーダー」
   (2) 在留資格
  2 面会交流 ─実際の事例から
 第5 ハーグ条約締結による実務への影響等
  1 外国にいる日本人当事者からの相談
  2 外国の裁判所でのリロケーションに関する裁判等
 レジュメ

第2部 質疑応答
 質疑応答

第3部 特別寄稿
 一誠を探して:Finding Issey〔佐野真木子〕

第4部 巻末資料
 第1 ハーグ条約室ホームページ資料
  【資料1】令和2年4月1日から令和3年3月31日までの実施状況
  【資料2】同実施状況(参考資料(グラフ))
  【資料3】同実施状況(PDF)
 第2 当日の講演スライド(抜粋)
 第3 参考裁判例
  【裁判例1】最判平成30年3月15日(民集72巻1号17頁)
  【裁判例2】最決平成29年12月21日(家判15号84頁)
  【裁判例3】最決令和2年4月16日(民集74巻3号737頁)

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