全訂第三版補訂 相続における戸籍の見方と登記手続
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これらの親族法上の身分関係の存否を具現し公証するものが戸籍であり、その戸籍は、明治時代に除籍となったものでも八十年間は整備し保存され、国民の利便に供されている。したがって、今後の相続事件は、長寿の層が目立ち、明治、大正、昭和の旧法当時に生まれた方を被相続人とする場合が必然的に多いことを考えると、被相続人との身分関係の存否の判断は、明治時代から現行に至る戸籍の記載方を理解し、これに旧民法、民法の応急措置法及び現行民法を適用するということによってはじめて達せられるであろう。このように相続と戸籍の関係は、密接不可分のものであるから、旧法戸籍及び現行戸籍の仕組みと記載方の理解なくしては、実務の処理において相続適格者を把握することは至難である。特に、旧法当時には家督相続が相続事件の大部分を占め、しかも、戸主が交替した一つの戸籍をみることにより家督相続人を容易に認定できたのに比べ、現行法下の遺産の相続は、配偶者と血族の共同相続であるのが通常であり、加えて新法後の戸籍編製の基準は、日本人同士であれば一組の夫婦とその子という親子二代の小家族のものになっていること、また、大家族であった旧法戸籍についても今日戸籍改製により同様に細分化されていることから、相続人となるべき者を知るには、この細分化された多くの戸籍を調査しなければならないという煩雑さがある。以上の観点から、本書は、相続登記の実務においては、戸籍の見方の理解が先決問題であると考え、執筆者らが先例を中心に経験した戸籍と相続登記の実務を参考にして、次の諸点に主眼をおいた。第一に、戸籍の仕組みと記載方を旧法戸籍と現行戸籍の各様式をもって説示し、特に旧法戸籍については、改製原戸籍と改製後の戸籍を明らかにした。     は し が き  4

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