⑵ 認定死亡 ある者が水難,火災その他の事変によって確実に死亡したとみられるが,死体が確認できない場合には,その取調べに当たった官公署が死亡を認定して死亡地の市町村長に報告することができ,市町村長は,この報告に基づいて戸籍に死亡の旨を記載します(戸89条,15条)。実務上,認定死亡と称されていますが,この場合も,反証のない限り,認定されたところに従い,死亡の事実及び時期が事実上推定され,相続が開始します(最判昭28.4.23民集7巻4号396頁)。⑶ 高齢者消除 戸籍実務上,100歳以上の高齢者であって死亡の事実を確認することができないものについては,市町村長が法務局又は地方法務局の長の許可を得て,職権で戸籍から消除する高齢者消除の取扱いが行われています(昭32.1.31民甲163民事局長回答・民月12巻2号24頁等。120歳以上の高齢者につき平22.9.6民一2191民事局民事第一課長通知・民月65巻11号133頁)。 しかし,これは戸籍上の整理のためであって,失踪宣告のような法的効果は生じませんので,高齢者消除の記載によって相続の開始を認定することはできません(松山家審昭42.4.19家月19巻11号117頁)。高齢者消除がされている者名義の不動産について相続登記をするには,戸籍上は除籍されても,相続の開始日(死亡日)が明らかではありませんので,改めて死亡届や戸籍法89条の報告による死亡の日又は失踪宣告により死亡とみなされる日が戸籍に記載された後でなければ,相続を証する情報とすることはできません(昭32.12.27民三1384民事局第三課長事務代理電報回答・登研123号34頁)。〔戸籍記載例 認定死亡の場合〕8 第Ⅰ部 第2章 相続の開始死 亡【死亡日】平成6年3月11日【死亡時分】推定午後3時【死亡地】千葉県安房郡和田町沖【報告日】平成6年3月12日【報告者】千倉警察署長【送付を受けた年月日】平成6年3月13日【受理者】千葉県安房郡和田町長
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