相登
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死亡後に父が失踪宣告を受けたが,子の死亡前に7年の失踪期間が満了していた場合には,その子は,いったん父の相続人になります。 失踪宣告による死亡は,法律上擬制されるものですので,生存の事実が判明しても,家庭裁判所による失踪宣告の取消しがない限り,死亡の効果を否定することはできません。⑷ 失踪宣告の取消し 失踪者の生存又は異時死亡の証明があったときは,家庭裁判所は,本人又は利害関係人の請求により,失踪宣告を取り消さなければなりません(民32条1項前段,家事149条,別表第一57項)。 失踪宣告取消しの審判は,即時抗告期間の経過により確定し(家事74条2項,149条4項),これが確定したときは,裁判所書記官は,その旨を公告し,かつ,失踪者の本籍地の市町村長に通知します。また,申立人の届出に基づき,失踪者の戸籍に失踪事項を消除する旨の記載がされます(戸94条,63条1項)。 失踪宣告が取り消されると,相続は開始しなかったことになり,失踪宣告がなかったのと同じ状態になるのが原則ですが,当事者が失踪宣告の取消し前に善意でした行為は,その効力を妨げられません(民32条1項後段)。ここにいう「善意」とは,失踪者が生存すること又は死亡とみなされる時期と異なる時期に死亡していたことを当該行為の時に知らないことをいいます。失踪宣告により財産を取得した相続人等の直接取得者は,その取消しによって権利を失い,これを返還しなければなりませんが,その場合には,現に利益を受けている限度で返還すれば足ります(民32条2項)。 相続登記後に失踪宣告が取り消されたときは,失踪者が登記権利者,現所有権登記名義人である相続人が登記義務者となり,「失踪宣告取消し」を登記原因(その日付は取消審判確定の日)として,相続登記の抹消を申請することができます。その抹消につき登記上の利害関係を有する第三者があるときは,当該第三者の承諾を要します(不登68条)。第1 相続の開始 11

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