会社法と定款第1節 会社法の制定と株式会社第1章 1 会社法以前の会社法制 明治26年施行の旧商法、明治32年施行の商法以来、商法を中心として会社法の規制がされて、昭和13年には旧有限会社法が制定され、昭和49年には「株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(以下「旧商法特例法」ともいう。)」が制定されるなどしたが、株式会社は、会社法制の中心として位置づけられてきた。上記商法は、大きな改正を含めて度々改正されてきたものであり、近年は毎年のように改正が行われ、会社法制に関わる者はその改正内容を追うだけでも大変であった。2 会社法制定 上記改正と並行して、平成14年9月から法制審議会の会社法(現代化関係)部会が審議を開始して、平成15年10月22日に「会社法制の現代化に関する要綱試案」を公表し、平成16年12月8日に「会社法制の現代化に関する要綱案」を決定した。その後、平成17年2月9日、法制審議会総会で「会社法制の現代化に関する要綱」及び「特別清算等の見直しに関する要綱」が決定され、これに基づいて「会社法」案及び「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「会社法整備法」という。)」案が国会に提出され、同年6月29日に成立し、同年7月26日に法律第86号、第87号として公布された。いずれも、平成18年5月1日に施行された(合併等の対価の柔軟化に関する部分は、施行が1年遅れた。)。会社法整備法により、会社法に関係する多数の法律が改正されたが、会社の登記の基本法である商業登記法も大きく改められた。 その間の平成18年2月7日、会社法関係の法務省令として、「会社法施行規則」(平成18年法務省令第12号)、「会社計算規則」(平成18年法務省令第13号)及び「電子公告規則」(平成18年法務省令第14号)が制定され、商業登記規則も改正された(平成18年法務省令第15号)。会社法自体979箇条に及ぶ大きな法律であるが、上記規則も、会社法関係法務省令も小さいものではなく、かつ重要な事項が規定されており、会社法を理解する上でも、必ず参照する必要があるし、定款の規律を検討する場合でも同様である。3 会社法による改正前商法改正の要点 会社法全体の解説をすることは本書の目的ではないが、定款の記載を理解する上で必要と思われるので、会社法による平成17年改正前商法の見直しについて簡単に触れることとする。同改正は、法律の表記をカタカナ文語体からひらがな口語体に改め、用語の整理見直しを行うとともに、社会経済情勢の変化に対応するために多くの実質的改正をしている。その要点を略述すると、次のとおりである(法務省のホームページの「会社法の概要」による。)。なお、株式会社の定款に係る部分については、第2編における各該当条項の解説部分を参照されたい。⑴ 利用者の視点に立った規律の見直し① 株式会社と有限会社を一つの会社類型(株式会社)として統合(既存の有限会社は従3 第1章 会社法と定款 第1節 会社法の制定と株式会社
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