定款
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会社法と定款 定款は、会社の目的、商号、本店の所在地、設立に際して出資される財産の価額又はその最低額、発起人の氏名又は名称及び住所並びに発行可能株式総数が必ず定められるほか(会社27条、37条)、発行する株式の内容、株主総会や取締役等の役員などの機関構成、配当その他株式会社の基本的事項を定めるものである。定款の記載事項については、後記第2章第1節を参照されたい。 また、株式会社の権利能力は、定款に定めた目的の範囲で存在する(民34条、最判昭和45年6月24日民集24巻6号625頁。同判決は、定款で定められた目的を遂行する上に直接又は間接に必要な行為であれば目的の範囲に包含されるとする。)。株主は、会社法の規定のほかに定款の定める株式の内容によりその権利を行使できる(会社105条、107条、108条等)。取締役や執行役は、定款に従ってその職務を遂行するものであり(会社355条、419条2項)、これらを含む株式会社の役員や会計監査人と株式会社の関係は委任に関する規定に従うもので(会社330条)、これらの者は、会社に対して善管注意義務を負っており、定款に反した行為をしたときは、その責任を問われることとなる(会社423条1項)。 以上のように、定款は、株式会社の在り方及びその活動の基本を定め、当該会社の株主、役員等関係者を規律するもので、最も重要な自治規範である。 したがって、定款を作成する際には、設立する株式会社の在り方等を慎重に検討してその内容を定めることが求められ、設立後も、会社の状況に応じて随時定款を見直し、所要な変更を加えるなどが必要である。定款の作成については後記第2章を、変更については後記第4編を参照されたい。1 定款自治の拡大 会社法における改正の要点は既に略述したが、その特徴の一つとして定款自治の拡大がある。上記のとおり、定款は、株式会社の在り方及びその活動の基本を定め、当該会社の株主、役員等関係者を規律する重要な自治規範であるが、その自治範囲を拡大することにより、株式会社の健全な自主性を高めることが考えられたものである。 具体的には、会社法において ① 定款の絶対的記載事項の限定 ② 定款の相対的記載事項の大幅増加 ③ 定款の定めにより発行できる株式の種類の拡充 ④ 役員その他機関構成の規律の柔軟化 ⑤ 配当規制の緩和 等を含めて、多くの点で定款で定めることにより選択できる事項が規定されている。その結果、定款に定めなければならないことが限定され、逆に定款で定めれば各種の仕組みを選択できるようになり、これらについて定款に定めることにより、多くのバリエーションに富んだ会社の在り方が選択できるようになった。会社法の下においては、定款の内容をどのように定めるかによって、企業運営の適正、効率を左右することとなろうし、どのような企業第3節 会社法における定款自治第1章 第3節 会社法における定款自治 7

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