改訂版境界の理論と実務
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31 境界の種類 裁判官,法務局・財務局の職員,地籍調査担当者,公共用地管理担当者,弁護士,土地家屋調査士,司法書士,さらには測量士,土地区画整理士,不動産取引関係者など土地境界についての実務を取り扱う者が,最も初歩的な知識として理解しておかなければならないのは,「境界」概念の多義性である。一般市民が土地の「境界」を口にするとき,その内容は一律ではない。これを法律に照らして分類するときは,所有権界,筆界,占有界,地上権界・借地権界・永小作権界,公物管理界,行政界など,様々な「境界」を指している。しかもやっかいなことには,これらは,とりわけ紛争のある境界について,しばしば別の位置に存在する(24頁2)。しかし本人はもちろん境界についての調査等の事務を取り扱う者もその事実に気づかず,混乱の原因になることもまれではない。 境界概念の多様性につき,結論を先に述べるなら次のとおりである。 ①土地と土地との境界には,所有権界と筆界があり,両者は原則的に一致すべきだが,一方が存在して他方が存在しないことがあり,また,異なる位置に在存することもある。所有権界は私的存在であり,民事実体法理に由来するのに対し,筆界は公的存在であり,不動産登記法理に由来する。 ②土地所有権の一部にも,あるいはそれを超えても存在し得る私的境界として,占有界と地上権界・借地権界・永小作権界があり,いずれも民事実体第1章 境界概念の多様性第1款 概 説第1節 境界の種類と淵源第1章境界概念の多様性

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