改訂版境界の理論と実務
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4法理に由来する。 ③行政的必要から定められた境界として,公物管理界と行政界があり,いずれも行政法(公物管理法・行政組織法)法理に由来する。2 本書における「境界」の使い分け 本書においては,境界をその種類にこだわらずに言い表すときにのみ「境界」と表記し,それ以外の場合は,「所有権界」等,前記1に述べた法律的分類としての各種分類の表記に従うこととする。 不動産登記法132条1項5号の「所有権の境界」すなわち土地の所有権が及ぶ範囲のうち,その縁(へり)を,実務では「所有権界」と呼びならわしている。所有権の客体としての土地とその隣地との境界に,なぜ所有権界と筆界という2種類があるのかを理解するためには,境界の成り立ちについて歴史的に見ていく必要がある〈1〉。1 所有権界の歴史的成立過程 土地と土地の境界は,有史以来,とりわけ土地の排他的支配を生産活動の基礎とする農耕社会において顕著に存在している。しかし,現行法上の土地「境界」と同じ意味内容における境界が成立したのは,近代的土地所有権が成立した後のことであり,我が国においては,明治初年であった。 明治維新政府は,町地や農地の類については旧幕藩体制時代から「近代的所有権に最も近い土地支配権」(所持=支配進退の権利)を有していた者に,原則として所有権を付与し,同時に土地の分割は市民の自由とした(明治5年2月15日太政官布告50号地所永代売買の禁制を解除。90頁2⑴)。旧幕藩体制の下では,現在の土地所有権と同一内容の排他的・絶対的な土地支配権は存在して第1編 境界の基礎知識〈1〉  以下の説明は,私見にすぎないが,その大部分は(特に断りのない限り)法務省訟務局の過去の準備書面における主張(以下,法務省訟務局の見解という。)と,ほぼ軌を一にしている。第2款 所有権界

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