改訂版境界の理論と実務
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5〈2〉  法務省訟務局の見解であるが,異説もある。詳細は,『里道・水路・海浜』1編2章2節参照。〈3〉  民法起草者の一人・梅謙次郎『民法要義 巻之二 物権篇〔三版〕』(和佛法律學校ほか,明治29年)117頁の223条注釈は,「彊界」は「所有権ノ範囲」を明らかにするものであるとしている。〈4〉  旧幕藩体制下の資料は,地元の市町村,資料館,法制史・近代史の史家,旧家等に当たって調査すべきことになる。将来的には法務局の不動産登記部門や,土地家屋調査士法25条2項に基づく資料管理センター(179頁注〈159〉)等に情報を集積すべきである。〈5〉  旧幕藩体制下の土地の特定方法と,明治期以降の地番との関係につき,『山林の境界と所有』のQ57及びQ58(74頁以下)参照。いなかったことから〈2〉,観念的には,土地所有権が法律で認められたこの時点で,近代的意義における土地所有権と土地所有権の境すなわち所有権界(私的境界)が形成されたといえる〈3〉。 もっとも,明治初年に創設された土地所有権の大部分は,旧幕藩体制下で土地について「所持=支配進退の権利」を有していた者にそのまま付与されたので,明治初年に形成された原始的土地所有権界の位置が争われる場合には,旧幕藩体制下で作成された名寄帳・検地野取帳・水帳(御図帳)・国絵図等〈4〉に記載の地番・地目・面積・地形・地物等も重要な証拠資料となることに留意する必要がある〈5〉。 この排他的・絶対的な「所有権と所有権がぶつかり合うところ」という意味での境界は,所有権界(所有権の及ぶ範囲)を意味する。したがって,所有権界は民法(民事実体法)に由来する概念といえる。 明治初年に創設された所有権は,その後,明治29年法律89号として制定された民法(厳密には民法施行法36条)によって民法上の物権として追認され,現在に至っていることから,最も古い所有権界は明治初年に形成されたといえるのである。2 所有権界についての民法の規定と実務 土地の相隣関係を調整することを目的として民法第2編「物権」第3章「所有権」中に223条から238条にかけて「境界」に関する規定が置かれている。その概要及び関連する実務は以下のとおりである。なお,民法は「筆第1章 境界概念の多様性

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