改訂版境界の理論と実務
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9(境界標につき)「被告は,原告に対し,被告の費用負担を1,原告の費用負担を1とする割合の費用負担をもって,別紙図面一及び二の点ロと点ハ上にコンクリート杭製の境界標を設置せよ。」(囲障につき)「被告は,原告に対し,被告の費用負担を1,原告の費用負担を1とする割合の費用負担をもって,別紙図面……を直線で結ぶ線上に,点ロを起点として既存のブロック塀が存する地点まで,高さ1.62m,幅0.1mの8段積みブロック塀を築造せよ。」と判示している〈14〉。 これまで述べてきたとおり,相隣関係は,信義則適用にふさわしい法律分野であり,信義則の適用により「法的処理においてより弾力的な適用が期待できる」としていると解されるが,上記裁判例はその好例をなすものであり,今後の裁判例の累積が期待される。とりわけ,原告が筆界確定訴訟で勝訴(確定)しても,なお被告が境界標の設置を拒むことが見込まれる場合には,筆界確定訴訟の提起と同時に上記請求を併合提起することを検討すべきであろう。 ⑶ 囲障設置権 ア 囲障の設置請求権 所有者の異なる2棟の建物があって〈15〉,その間に空地があれば,各建物所有者は,他の建物所有者と共同の費用で,両地の所有権界に塀や垣根などの囲障を設けることができる(民法225条1項)。囲障の種類・構造について,当事者の協議が調わないときは,高さ2mの板塀又は竹垣類とする(民法225条2項)。設置・保存の費用は折半である(民法226条)が,増額分を自分で負担するのであれば,一方当事者は,さらに良い材料,より高さのある囲障を設けることができる(民法227条)。ただし,異なる慣習があればそれに従う(民法228条)。前記⑵イ掲記の裁判例は,境界標の設置とともに,位置・材質・体積を特定した囲障の設置請求をも是認している。〈14〉  東京高判平成29年10月19日(公刊物未登載)は,設置すべき境界標の種類を特定することなく設置妨害禁止請求を認容している。〈15〉  東京高判平成12年4月19日(公刊物未登載)は,民法225条1項は,所有者の異なる2棟の建物の間に空地がある場合の規定であるから,一方の土地に建物が建っていない場合には適用の余地がないとしている。第1章 境界概念の多様性

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