改訂版境界の理論と実務
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15〈36〉  地券制度(91頁)は,明治22年に土地台帳制度に変わり,土地台帳は,国税(昭和6年地租法),府県税(昭和22年地租法廃止・土地台帳法制定),市町村の固定資産税(昭和25年)の基礎資料とされた後,一元化(174頁)によって廃止されるまで続いた。〈37〉  本款で「公図」というとき,断りのない限り,明治初期に作成された「和紙公図」それ自体を指す。121頁。〈38〉  新井克美『登記手続における公図の沿革と境界』(テイハン,昭和59年)86頁。〈39〉  土地改良事業は,①農業用用排水施設,農業用道路(中略)の新設,管理,廃止又は変更等,②区画整理,③農用地の造成,④埋立て又は干拓,その他広範囲にわされた筆界は,実務上「原始筆界」と呼ばれ,その後,地租に関する事項を登録した土地台帳制度(土地台帳附属地図を含む。)(明治22年3月22日勅令39号土地台帳規則1条。174頁),不動産登記制度(116頁2款)において承継されて現在に至っている〈36〉。 原始筆界は,現代の登記情報(登記簿・登記記録・地図・公図〈37〉,地積測量図など登記所保有情報全般を指す。101頁)上で見ると,表題部登記記録中,地番欄の本番(支号のないもの)と本番の境界として表示されている〈38〉。その後,分筆・合筆・再分筆が繰り返される都度,新たな筆界が創設されていった。実務ではこの分筆界等のことを「創設筆界」と呼んでいる。 ⑶ 原始筆界であることの効果 筆界の判定に先立って行う登記情報等の資料調査においては,分・合筆に係る来歴の調査を行う必要がある(171頁)。その筆界の来歴を調査するに際し,前述⑵の「原始筆界」は,これ以上遡って調査する必要がない筆界という意味を持つ。 原始筆界には,①前述の地租改正時に形成された筆界のほか,②埋立て等によって新たに生じた土地について形成された筆界,③旧耕地整理法・土地改良法・土地区画整理法等に基づく土地区画整理事業・土地改良事業・都市再生法等による権利変換の確定後に形成された筆界なども,これに含まれる。②及び③は,①との対比において,「後発的原始筆界」とでもいうべき存在であろう。 これらのうち,土地改良法は,農地改革後,農地行政を統一する目的で昭和24年に耕地整理法,水利組合法等を改廃吸収して制定されている。発足当初,土地改良事業〈39〉は,農家が自主的に組織した「土地改良区」による事第1章 境界概念の多様性

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