改訂版境界の理論と実務
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16業が中心であったことから,その成果である土地改良図には,公図地区との間に重複や空白地帯を生じているなど,筆界判定上,困難を伴うものが少なくないとされている。 ⑷ 筆界の発生事由 筆界の調査方法は,発生事由によって大きく異なる。あらかじめここで整理しておくと,筆界には,前述の①原始筆界,②分筆界(いわゆる創設筆界)の他,③地租改正時以降の埋立てなどによる新たな地番設定によって発生した後発的原始筆界(その1),④旧耕地整理法〈40〉・土地改良法・土地区画整理法等に基づく換地処分に伴う後発的原始筆界(その2),⑤境界査定処分により再形成された筆界(33頁),⑥筆界確定訴訟により再形成された筆界(591頁)がある。2 筆界についての不動産登記法等の規定 ⑴ 平成17年改正後の不動産登記法 平成17年法律29号による改正後の不動産登記法123条1号は,「筆界」を定義して「表題登記がある1筆の土地(以下,単に「1筆の土地」という。)とこれに隣接する他の土地(表題登記がない土地を含む。以下同じ。)との間において,当該1筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた2以上の点及びこれらを結ぶ直線をいう」としている。これは,所有権界とは別個独立の概念としての「筆界」を立法的に初めて明確にしたものといえる。 この規定は,直接的には筆界特定制度(423頁)における用語を定義したものにすぎないが,「土地の所有権の境界」すなわち所有権界は筆界とは別個の存在であることを明言し(不登法132条1項5号),従来「境界」確定訴訟と呼ばれていた訴訟類型を「筆界の確定を求める訴え」と言い換えていることから,所有権界と別個独立の存在としての筆界を認めている従来の判例・通説(552頁以下)を立法的に採用したことは明白である。 この規定が現れる前には,次の⑵で述べるとおり,法律より下位の法令等第1編 境界の基礎知識たっている(土地改良法2条)。〈40〉  対象を農耕地に限るとする規定がなかったことから,実際には宅地開発を目的とする耕地整理も多数実施されている。

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