18 筆界概念不要論の主張にもかかわらず,前記⑴の平成17年改正以前から法令中には筆界という概念が存在していたし,そもそも明治初年において原始筆界(89頁)が形成されていったその時点で,既に地番境としての筆界概念(裁判所のいう「公法上の境界」)は誕生していたと評し得る。ましてや平成17年改正後は,所有権界とは別の筆界の存在を否定する見解は成り立ち得なくなったといえる。3 筆界の法的位置付け 筆界についての不動産登記法123条1号(前記2⑴。以下,本項で「定義規定」と略称する。)は,筆界の法的意義について,いくつかの重要な示唆を含んでいる。 ⑴ 不動産登記法上の存在であること 定義規定は,筆界が「表題登記がある1筆の土地」の外縁であるとしており,筆界は表題登記のある土地に随伴するものであることを明らかにしている。これにより,筆界は不動産登記法上のいわば公的な存在であり,所有権界が登記の有無にかかわらず民法上存在するのと次元を異にすることを知り得る。 ⑵ 筆界は不動であること 定義規定は,筆界とは一筆地が「登記された時」にその境とされた結線情報を指すとしており,登記時点で一旦形成された筆界は,それ以降,不動の存在であることを示している。この点は,所有権界が,所有者間において自由に処分され,いつでも変動し得るものであるのと異なっている。 なお,「登記された時」とは,登記されている地番の原始筆界については,地租改正事業により当該土地につき地番とその区画が形成された時をいうと解される。登記法(明治19年法律1号)の制定を待つまでもなく,筆界(地番境)に係る表示登記法制は,明治6年7月28日制定の地租改正条例(太政官布告272号)に基づいて実施されている(13頁⑵)からである。 ⑶ 表題のない土地の筆界も論じ得ること 定義規定は,対象となる一筆地に隣接する他の土地は,「表題登記のない土地」でもよいとしている。これにより,隣地が脱落地や国有無番地等であっても,表題登記のある一筆地と当該土地との間に筆界を認めることがで第1編 境界の基礎知識
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