改訂版境界の理論と実務
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19〈44〉  最(3小)判平成5年3月30日訟月39巻11号2326頁。〈45〉  『里道・水路・海浜』2編3章2節4参照。きることが明らかにされている。同規定は,登記された土地と登記されていない土地との間にも筆界が存在するというというものであり,最高裁判例〈44〉に沿うものである。 しかし,この定義規定は,2つの点で疑問を残している。1つは,無番地相互間では,筆界を認め得ないのかという点である。この点については,後述する(26頁⑶)。 もう1つの疑問は,表題登記のある一筆地は,海や河川敷との間に筆界を持つのかという点である。私見によれば,1筆の土地は必ず四囲に筆界を持つ。たとえ四囲を海に囲まれている1筆の土地であっても,海面下の地盤は原則として国有無番地と解する〈45〉ことから,筆界を持つことになる。これに対し,海面下の地盤につき所有権の成立を否定する通説・法務省民事局の見解によれば,海面下の地盤に隣接した一筆地は,海面側には筆界を持たないことになる。3編5章5節2款(293頁以下)でやや詳しく述べる。 ⑷ 筆界判定の最小単位は筆界「点」であること 定義規定によれば,筆界は,筆界「点」及びその結線情報である。これを突き詰めると,筆界調査における調査・判定の対象は,筆界「点」(いわゆる屈曲点)であるということになりそうである。しかし,筆界確定訴訟及び筆界特定における実務は,1点のみの確認を求めることは許されないとする(440頁)。もっとも,京都地判平成11年9月30日(公刊物未登載)は,原告所有地と国有地1との境界は,双方主張線である万年塀の東外縁をもって確定し,「原告所有地と国有地1及び国有地2との接点」についても,双方主張線である万年塀の東外縁線と北外縁線の「交点」をもって確定するとの判示を行っている。さらに,福岡高判平成14年6月27日(裁判所ウェブサイト)は,甲地と乙地は,全体としては隣接しておらず,aの1点で接すると認められると認定した上,甲地と乙地の境界はa点であると判示している。1点だけの確認に実務上の合理性がある限り,これを否定する理由はないように思われる。第1章 境界概念の多様性

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