新訂設問解説判決による登記
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 不動産登記法は,権利に関する登記の申請について,原則として,登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならないとしつつ(法60条),当事者の一方が登記の申請に協力しない場合において,その他方が一方に対し,登記手続をすべきことを命ずる確定判決を得たときは,他方は,単独で登記の申請をすることができるものとしています(法63条1項)。この判決による登記の手続を理解するためには,民事訴訟及び強制執行の各手続を知ることが必要ですので,本書の冒頭において,判決による登記の手続を理解するのに必要と思われる基本的な事項について触れるとともに,判決による登記の基本的な仕組みについて述べておきたいと思います。1 民事第一審手続の流れ 例えば,甲が乙に弁済期限を定めて100万円を貸し渡したとします。この場合,弁済期限が来れば,甲は,乙に対し100万円の返済を求めることができ,他方,乙は,当然にこれを返済しなければなりません。乙は,弁済期限までには借りた金を甲に返済するのが普通ですが,乙が,「確かにお金は受け取ったが,あれはもらったものだ。」とか,「お金は借りたが,とっくに返済したではないか。」などと主張して,弁済期限が来ても返済しないということも起こり得ます。 このような場合,当事者がよく話し合った上で示談が成立したり,あるいは裁判所の調停により双方に合意が成立するなど,紛争の自主的・任意的な解決を図ることができればよいのですが,双方の言い分が対立してこれができないときは,裁判所による強制的な解決として,甲は,乙を相手方として貸金返還請求の訴えを提起し,請求認容の判決(乙に対し100万円の支払を命ずる判決)を得なければなりません。第1 民事訴訟手続の概要  1第1 民事訴訟手続の概要第1章 序  説

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