新訂設問解説判決による登記
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⑶ 弁論主義に関連する事項─自白・擬制自白・欠席判決債務の弁済を主張していたところ,裁判所が,乙の主張する弁済の事実は認められないものの,証拠上,債務免除の事実が認められるとして,甲の請求を棄却すれば,当事者の主張しない主要事実に基づいて判決をしたことになり,弁論主義に反します。 なお,弁論主義が問題となるのは主要事実についてであり,主要事実の存否を推認するのに役立つ間接事実については,主要事実が弁論に現れている限り,当事者の陳述がなくても斟酌することができます。例えば,設例で,金銭を貸し付けた事実が弁論で主張されている限り,これを推認させる間接事実(そのころ甲が自己の銀行預金から同額の金銭の払戻しを受けた事実など)は,証拠により認定することができます。イ 自白の拘束力 弁論主義の下では,裁判所は,当事者間に争いのない事実(自白及び擬制自白された事実)は,そのまま判決の基礎としなければならないものとされています(民訴法159条,179条)。 裁判所が証拠調べの結果によって事実の存否を確定するのは,当事者間に争いのある事実に限られます。当事者間に争いのない主要事実については,当該事実が存在するものとして判決をしなければなりません。これは,民事訴訟における裁判所の役割は,個人的利益をめぐる紛争を当事者間で相対的に解決することにあるから,裁判所の判断も,当事者間に争いのある限度で示せば足りるとする考え方に由来します。ウ 職権証拠調べの原則的禁止 弁論主義の下では,裁判所は,当事者間に争いのある主要事実についての証拠資料は,原則として,当事者の申し出た証拠方法から獲得しなければならないものとされています。裁判所は,当事者から攻撃・防御の方法として提出された証拠資料(文書や証人の証言,検証結果など)に基づいて事実の存否を確定します。ア 自 白 民事訴訟における自白とは,当事者が口頭弁論又は弁論準備手続において相手方の主張する自己に不利な事実を認めて争わない旨の陳述をい第1 民事訴訟手続の概要  7

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