新訂設問解説判決による登記
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10  第1章 序  説でに提出された証拠資料に基づいて行われますので,既判力は,事実審の口頭弁論終結の時を基準として生じます(民執法35条2項参照)。具体的には,訴訟が第1審判決だけで確定したときは,第1審の口頭弁論終結時であり,控訴審で実体判決により確定したときは,第1審判決を取り消して控訴を認容する判決はもちろん,控訴棄却の判決であっても,控訴審における口頭弁論終結時です。上告審では事実審理を行いませんので,破棄自判の場合でも,控訴審の口頭弁論終結時が基準となります。イ 既判力の客観的範囲 既判力の客観的範囲とは,判決において示される様々な法律的判断のうち,どの部分に既判力が生ずるかという問題です。 確定判決の既判力は,原則として,「主文に包含するものに限り」生ずるとされています(民訴法114条1項)。すなわち,既判力は,判決主文に示された訴訟物たる権利又は法律関係の存否の判断について生じ,その前提となる判決理由中の事実認定や先決的法律関係の存否に係る判断については,既判力を生じません。例えば,判例は,所有権に基づく移転又は抹消の登記手続を求める訴訟の訴訟物は登記請求権自体であり,その基礎となる所有権の存否は理由中の判断であって既判力を生じないとしています(最一小判昭30.12.1民集9巻13号1903頁)。したがって,所有権の移転又は抹消の登記請求権が確定され,登記手続が命ぜられたとしても,所有権の存在が確定されるわけではなく,別訴でその存否を争うことができるということになりますので,原告としては,紛争の蒸し返しを避けるために,所有権の確認と所有権の移転又は抹消の登記手続とを併せて請求する場合が少なくありません。ウ 既判力の主観的範囲 既判力の主観的範囲とは,既判力が何人と何人の間に生ずるのかという問題です。 民事訴訟における判決は,当事者間の紛争を解決するものですから,この意味での既判力は,原則として,確定判決の名宛人である当事者の間において生じます(民訴法115条1項1号)。 しかし,例えば,物の引渡請求において,敗訴した被告がこれを第三

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