新訂設問解説判決による登記
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者に仮装譲渡することによって容易に強制執行を免れることができるとすると,原告がそれまでに費やした費用や労力等が全て水泡に帰すること等になりますので,民事訴訟法は,次の場合には,確定判決の既判力が当事者以外の第三者にも及ぶものとしています。 第1は,「当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人」です(同法115条1項2号)。破産管財人(破産法80条)や遺言執行者(民法1012条1項),選定当事者(民訴法30条)など利益帰属主体である本人のために訴訟追行権を有する者に対する確定判決は,それぞれ破産者,相続人,選定者等の利益帰属主体に対してもその効力が及びます。民法423条の債権者代位による訴訟は,債権者が債務者の有する第三債務者に対する権利を行使するために,債権者が原告となって,第三債務者を被告として提起するものですが,判例は,当該代位訴訟の判決の効力についても,当事者のみならず,被代位者たる債務者にも及ぶと解しています(大判昭15.3.15民集19巻586頁)。平成29年改正により新設された民法423条の7の規定に基づく債権者代位による登記手続請求訴訟についても,同様です。したがって,不動産の所有権が甲から乙,乙から丙へと順次移転し,丙が,乙に代位して甲に対し,乙への所有権移転登記手続を求める訴訟を提起し,勝訴の確定判決を得たときは,その判決の効力は,乙にも及びます。詐害行為取消請求を認容する確定判決の効力についても,上記改正により,債務者にも及ぶこととされました(民法425条)。 第2は,当事者又は利益帰属主体の「口頭弁論終結後の承継人」です(民訴法115条1項3号)。ここにいう「承継人」とは,既判力の標準時である事実審の口頭弁論終結時より後に訴訟物についての当事者適格を承継した者をいい,承継の事由が相続や会社合併等の一般承継であるか,権利譲渡や債務引受等の特定承継であるかを問いません。これらの承継人に対して既判力が及ぶとされるのは,もしこれが及ばないとすれば,勝訴した当事者は,当該承継人に対して新たに訴えを提起せざるを得なくなるからです。 しかし,所有権移転の登記手続又はその抹消の登記手続を求める訴訟第1 民事訴訟手続の概要  11

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