新訂設問解説判決による登記
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1 強制執行手続の流れ 確定した判決によって,当事者の一方に対し,金銭の支払など一定の給付をすべきことを命じられた場合には,これに従って履行するのが普通ですが,中には判決に従わずに給付義務を履行しない者もいるでしょう。このような場合,冒頭の設例でいえば,甲・乙間の訴訟において,「乙は,甲に対し,金100万円を支払え。」との判決があり,これが確定したにもかかわらず,乙がなお支払に応じないときは,甲自身による自力救済は禁止されていますので,国家の力を借りて強制的に判決の内容を実現する手続,すなわち,国の執行機関に乙が所有する不動産や動産,あるいは銀行預金や給料等の債権を差し押さえてもらい,その換価や取立てによって得られた金銭から配当金の交付を受ける方法等によりその満足を得る手続が必要になります。これが強制執行の手続です。 強制執行手続は,判決手続とは別個独立した手続として定められ(その基本となる法律は民事執行法です(注)。),原則として,執行文の付与された債務名義の正本に基づき(民執法25条本文),債権者の申立てによって,執行機関(執行裁判所・執行官)が個々の強制執行を実施するものとされています(民執法2条)。 個々の強制執行に当たっては,その実現を図るべき債権の種類や執行の目的物に応じて種々の方法が採られます。金銭債権(金銭の支払を目的とする請求権)の実現を図る金銭執行においては,①債務者の責任財産に属する各個の不動産,動産又は債権その他の財産権を差し押さえて債務者の処分権を奪い,②次いで,債務名義の取得裁判所・公証人執行文付与の申立て債権者執行文の付与裁判所書記官・公証人強制執行の申立て債権者執  行執行裁判所・執行官第2 強制執行手続の概要  13第2 強制執行手続の概要

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