新訂設問解説判決による登記
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2 特定の登記手続を命ずる判決であること 判決による登記は,確定判決によって擬制された一方当事者の登記申請の意思表示を,その者の登記申請行為に代えるものであって,その意思表示は,基本的には主文に掲げられている事項に限られますから,法63条1項の確定判決は,特定の登記手続を命ずるものであること,すなわち,判決の主28  第2章 判決による登記(注2) 明33.9.24民刑第1390号民刑局長回答・先例集上185頁(注3) 昭56.9.8民三第5483号民事局第三課長回答・先例集追Ⅵ992頁〔要旨〕 「被告は原告より金千円を受領し該不動産を原告に売り戻すべし」との判決が確定し,原告において金千円を供託した場合でも,当該判決は,判決主文で相手方に登記申請をなすべき旨を命じたものではないから,不登法27条にいう「判決」とはいえず,登記権利者のみで所有権移転の登記を申請することはできない。〔照会〕 添付別紙和解調書の和解条項第2項に基づき登記権利者として単独にて所有権移転登記手続をなしうるや否や。      和解条項〈抄〉1 被告○○両名は別紙目録一記載の土地を金○○万円にて,被告○○は別紙目録二記載の建物を金○○万円にて,それぞれ原告から買受けることとする。2 被告○○両名ならびに利害関係人は原告に対し,前項の売買代金,金○○万円および金○○万円,合計金○○万円について支払うものとし,これを昭和53年8月末日限り原告代理人事務所に持参または送金して支払う。 原告は被告らに対し,右代金の支払いを受けるのと引換えに,別紙目録一,二記載の物件の所有権移転登記に必要な書類を交付するものとする。〔回答〕 本年3月3日付け神弁照56発第91号をもって当局あて照会のあった標記の件については,消極に解すべきものと考えます。【設問3】 登記手続をすべきことを命ずる確定判決の主文には,当該登記の申請情報として提供すべき事項を明示しなければならないか。回 答 当該判決の主文においては,その内容として,目的不動産が特定され,当事者(登記権利者及び登記義務者)の氏名又は名称及び住所,登記の目的,登記原因及びその日付,その他当該登記の申請に必要な事項が個別具体的に明示されていることを要するものと考えます。

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