新訂設問解説判決による登記
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〈主文例①〉 被告は,原告に対し,別紙物件目録記載の不動産につき,令和○年○月○日売買を原因とする所有権移転登記手続をせよ。〈主文例②〉 被告は,原告に対し,別紙物件目録記載の土地について,令和○年○月○日合意解除を原因として,○○地方法務局令和○年○月○日受付第○○号の所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。〈主文例③〉 被告は,別紙物件目録記載の土地について,○○地方法務局令和○年○月○日受付第○○号の所有権移転登記の抹消登記手続をせよ。〔コメント〕1  上記主文例①及び②は,いずれも登記手続を命ずる判決の一般的な例を示したものですが,登記申請の意思表示は,登記官に対して向けられたものですので,上記の文例で,「原告に対し」というのは,「原告のために」という趣旨であって,意思表示の「名宛人」を意味するものではありません(民事実務講義案Ⅰ347頁の(注4))。また,「登記をせよ」とはしないで,「登記手続をせよ」というのも,登記申請という意思表示をすることを表現したものです(同講義案345頁)。登記原因及びその日付を明示するのが相当であると考えられます。特に,和解調書等の場合には,その「理由」がありませんので,和解条項等に登記原因及びその日付を明記すべきです(執行文講義案174頁)。この点については,訴訟関係者の登記手続に対する理解や裁判所による適切な釈明権の行使等が望まれるでしょう。2  民事判決起案の手引15頁は,「実務では,移転登記手続を命ずる主文は登記原因を明らかにして記載し,抹消登記手続を命ずる主文では登記原因を示さないのが通例である。」として,上記主文例③を例示しています。他方,実務講義案Ⅰ347頁では,登記原因を明示した和解条項例を示しており,執行文講義案175頁でも,本来的には表示するのが望ましいとしています。3  前述した平成12年1月5日民事局第三課長回答に係る照会は,上記主文例③に沿ったものですが,同回答は,主文例②のように,登記原因及びその日付を明示するのが相当であるとしたものです。第1 法63条1項の「確定判決」の意義  31

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