推薦のことば1 法律事務に関する説明は大変です。難しいことを分かりやすく説明するのは大変だと言いますが,実は,分かりやすく説明することだけなら,そう大変でもありません。一応分かった気にさせることはできます。問題は,少なくない例外やら特殊ケースやら,まだ結論が定まっていない問題(最高裁判決が待たれる場合など)やらが存在することをどの程度説明するか,どこで切り捨てるか,完璧な説明はあり得ないということを如何にして理解してもらうか,というところです。 この本の著者もすべての答えが載っているマニュアルなど「あり得ない」と書いていますが,「分かりやすい説明」は必ず,何かを切り捨てた説明になります。ですから,「一応の理解としてはこれくらいで良いでしょうが,実は,もっと細かい話をすれば色々な注意点も他にあるのですよ」という説明にならざるを得ないので,ここが本当に悩むところなのです。 2008年から始まった日本弁護士連合会の「事務職員能力認定制度」に基づく全国統一研修・能力認定試験では,テキスト作りでも研修の内容に関しても,この本の著者である矢野さんを含め,全国のベテラン事務職員の皆さんのお力を多々お借りしました。プロ事務職員と言えるレベルはどのあたりか,どこまで理解してもらう必要があるか,何よりも,「法律的な物の考え方」をどうやって身につけてもらうか,現場の事務職員の知識・知恵と経験が結集されたからこそ,勘どころを押さえることができたのだと思います。 この本は,矢野さんが,今まで色々な事務職員研修の講師を務められた成果を結集したものだと聞いています。いい本ができましたね。一見,非常に堅く見えますが,実は,経験2年から5年程度の事務職員にどうやって分かってもらうか,かなりかみ砕いた説明になっています。真面目だけれど温かさの感じられる本ですね。著者の人柄が伝わってくる本です。 とりあえず,この本の内容が「一応分かった」レベルになれば,プロ事務職員の一歩手前までは行けます。でも,「すべて分かったつもり」にはなら推薦のことば
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