第3版補訂 戸籍の重箱
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vii 戸籍の記載や審査が一人前にできるようになるには,どれだけの時間がかかるでしょうか。個人差はありますが,少なくとも5年以上要すると私は思います。私が初めて戸籍に出会った頃,正直なところ,戸籍がこんなに難しいとは思っていませんでした。初めての仕事は誰でも戸惑いますが,一定の期間を経験すれば,ある程度の自信がつきます。でも不思議なことに,戸籍は勉強すればするほど難しいと感じるのです。どれだけ勉強してもゴールが見えてこないのです。それは,戸籍は人の人生と密着したものであり,人の人生が限りなく無数にあるからなのだと思います。そして,この血の通った「人」との関わりこそが,戸籍の原点であり,また,戸籍の最大の魅力だとも思うのです。 深くてゴールが見えない戸籍の入り口に立ち,知識の蓄積もないまま窓口に出て,届書の審査をしたり,戸籍の相談を受けたりしなければならなくなったとき,何をどう勉強していけば良いのか迷う日々が続きます。聞き慣れない専門的な言葉や言い回し,あるいは難しい法律用語等々に,私たちは大きな不安を感じるのです。もちろん努力の積み重ねが必要ですが,早く知識を習得しなければと焦るあまり,導入の時点で迷路に迷い込むことも少なくありません。 この本は,私が職場内の研修(又は勉強会)や戸籍協議会の研修会のためにつくり,利用していたもの,あるいは日常業務を処理する中で書き留めておいたものに手を加えてまとめたものです。私は,迷い悩んだあの頃の実体験をもとに,この本をつくりました。あの頃何がわからなかったのか,何を知りたかったのか,そして何に興味を持ったのかを振り返り,同じ仕事をする仲間としての目線で戸籍を捉えてみました。この本は,戸籍実務の現場で日々苦心されている皆さんへの応援歌ともいうべきものです。特に初めて戸籍を勉強される方,そして戸籍は「ただ難しいものだ」と感じている方に,「戸籍のこころ」を知っていただき,読後には,「よし,頑張るぞ」と言っていただけるような,そんな本であったらいいなと思っています。戸籍事務を初めて担当される方々のために少しでもお役に立つことがあれば幸いです。 私の後輩に,質問が大好きな子がいます。矢継ぎ早に質問し,その疑問が解はじめには じ め に

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