2 認知の効果39○ 死後認知 子が認知されないまま死亡した場合,死亡した子に直系の卑属(子の子)がいない限り認知はできません(民783条2項)。これは,死亡すれば権利能力がなくなってしまうので,基本的には死亡後は認知できないのですが,死亡した子にさらに子があるときは,死亡した子の認知は,孫である子に認知した父(祖父)の相続権(代襲相続─民887条)を発生させる効果があるからです。孫が成人しているときは,認知届には,その孫の承諾が必要です。○ 遺言認知(民781条2項,戸64条) 遺言による認知(民781条2項)は,遺言者の死亡の時から効力が生じるので(民985条1項),遺言執行者がその就職の日から10日以内に,遺言書の謄本を添付して認知届をすることが必要です(戸64条)。⑵ 強制認知(民787条,戸63条) 裁判による認知のことです。認知される子,子の直系卑属,子の法定代理人などが,事実上の父に対して「認知せよ」と訴える裁判です。父が死亡している場合は,父死亡後3年以内なら訴えを起こすことができます。 出生届の嫡出推定のところで,前夫との父子関係を否定するには「嫡出否認の訴え」又は「親子関係不存在確認の裁判」が必要と述べましたが,「強制認知」も前夫との父子関係を否定する方法として訴えを起こすことがあります。生理上の父が二人いることは医学的にあり得ないので,強制認知の裁判で定められた真実の父が前夫以外の人なら,イコール前夫が父ではないという考えにたどりつくからです(裁判の反射的効果)。⑴ 遡及効(民784条) 嫡出でない子と認知した父との間に,法律上の親子関係が生じます。 認知の効果は,認知した時から発生するのではなく,出生の時点までさかのぼって発生します(民784条)。この点が婚姻や養子縁組の場合とは違うところです。⑵ 準正(民789条) 出生のところでも述べましたが,「父の認知」と「父母の婚姻」の両方の条件が揃うと,嫡出でない子は嫡出子になります。後で条件が揃って嫡出子になることを「準正」と言います。認知で条件が揃った場合を「認知準正」(民789条2項),父母の婚姻で条件が揃った場合を「婚姻準正」(同条1項)と言います。認知の効果は,嫡出でない子と父の法律上の親子関係を発生させるとともに,父と母が婚姻をすれば,嫡出子になるという付随した効果もあるのです。第2 認 知
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