v 私がはじめに戸籍実務に携わるようになった頃,先輩がこう言っていました。「法律の改正があるとたいへん。今まで覚えていたことが邪魔をして,つい昔の取扱いをしてしまいそうになる」。その頃の私は,自分のことで精いっぱいで,先輩の嘆きは正直いってわかりませんでした。月日が流れ,私も先輩と呼ばれるようになって,先輩の気持ちを痛感することになりましたが,私は違う形でみなさんに法改正の重要さを伝えたいと思います。 平成23年法律第61号により,子の福祉にかかわる親権制度・未成年後見制度の見直し等のため,民法の一部改正がなされました。これに伴い,戸籍法・家事審判法・児童福祉法などが改正され,平成24年4月1日,改正後の民法等が施行されました。このような法改正があるたびに,実務者である私たちは,今まで培った知識が無駄になるのではないかという不安を抱きます。経験年数が長いほど,その不安は大きいのではないでしょうか。窓口で失敗しないために「どこがどう変わったのか」,「どこをどうすればいいのか」を,懸命に学ぼうとするのですが,つい以前の知識が邪魔をして,思わぬ失敗をしてしまうのではないかと心配になるのです。でも,みなさんが培った知識は決して無駄ではありません。それは,その知識の基礎があるからこそ,改正の趣旨が実感できるからです。 改正の趣旨の多くは,その時代背景にあります。近年の制度の新設,あるいは改正には,本人確認及び不受理申出制度,嫡出でない子の続柄の記載の変更,申出による戸籍の再製などがありますが,私たちの生活に密着したこれらの改正には,それぞれに大きな意味があります。 普遍的な親子の愛,子を中心とした人と人との絆,子の利益を最優先したこのたびの法改正には,子を守ろうとする「人々の願い」が込められています。第2版では,「どこがどう変わったのか」を見つけると同時に,「だからこうなったのだ」を実感していただくために,解説に,できるだけ法改正の趣旨を盛り込むようにしました。 その改正された条文が語る意義を読み取ることで,より一層理解が深まり,第2版の刊行にあたって第2版の刊行にあたって
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