(試し読み)家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務(第4版)
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章1遺産分割総論1 意 義 遺産分割とは,被相続人が死亡時に有していた財産(遺産)について,個々の相続財産の権利者を確定させる手続である。共同相続の場合には,相続財産が相続人の相続分に従って複数の相続人に共同帰属している(遺産共有,民898条1項)。そこで,相続財産を構成している個々の相続財産について各相続人の単独所有にするなど,終局的な帰属を確定するために,遺産分割を行うことになる(民909条)。2 遺産分割の対象 遺産分割の対象となる遺産とは,原則として,「相続開始時に存在」し,かつ,「分割時にも存在」する「未分割」の遺産をいう。 第1に,「相続開始時に存在」するというのは,被相続人が死亡した時の財産が分割の対象となるということである。例えば,相続人の一人が被相続人の亡くなる直前に被相続人名義の預貯金を引き出した場合においては,預貯金を引き出した相続人が引き出した金額を遺産に戻すという合意をしない限り,遺産分割の対象とならない。2 遺産分割の対象 3 第2に,相続開始時に存在した遺産が分割時に存在しない場合は,遺産分割の対象とはならない。その例として,遺産が相続開始後に滅失した場合や相続人によって遺産の一部や全部が処分された結果,保険金請求権が発生したり,損害賠償請求権が発生したり,売却代金が発生した※ 相続開始前の遺産に属する財産の処分行為(いわゆる使途不明金)については,77頁を参照されたい。第第章第1 遺産分割手続

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