(試し読み)家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務(第4版)
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2 成立要件 配偶者居住権の価額が居住建物の所有権を取得する場合よりも低廉な価額となるのはなぜか。 被相続人の相続開始時に,配偶者が病気や体調不良等を理由として一時的に入院,施設入所又は親戚宅において同居をしている場合でも,当該建物に同じ。)に居住していたこと2 成立要件 377者居住権を取り上げるべきか,遺産の分割方法において,配偶者の現実的相続分を確定してから,金融資産の取得割合を絡めて協議すべきかが問題となる。この点は個別の事案ごとの判断になる。調停運営の視点については,前記第2章4を参照されたい。 「配偶者」とは,法律上被相続人と婚姻していた者に限られ,内縁の配偶者は含まれない。 また,配偶者が「居住していた」とは,配偶者が当該建物を生活の本拠としていたことを意味する(堂薗幹一郎ほか「改正相続法の要点⑴」金法2099号8頁,堂薗幹一郎ほか「相続法改正の解説⑴」民月73巻8号9頁,『一問一答』11頁など)。設例12−1【解 説】 配偶者居住権は,配偶者が,居住建物の所有者に対し,無償で居住建物を使用及び収益することができる賃借権類似の債権である。簡易な評価方法の考え方(384頁以下参照)によれば,配偶者居住権の価値は建物敷地の現在価額(例:5,000万円)から,負担付建物所有権の価額と負担付土地所有権等の価額の合計額(例:2,568万円)を控除した価額(例:2,432万円)となる。 このように,配偶者居住権の価額は,建物敷地の所有権の価額(5,000万円)より低廉となる。⑴ 配偶者が,相続開始の時に,遺産である建物(建物持分を含む。以下設例12−2「居住」の意味配偶者居住権の経済的価値

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