(試し読み)家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務(第4版)
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426 第13章 具体的な分割方法② 共同相続人の合意による分割禁止(令和3年改正)③ 家庭裁判所による分割禁止⑶ 分割禁止の対象財産 禁止の対象は,遺産の全部に限らず,一部の特定財産でも可能であるが,割合的一部の分割禁止は,何が禁止されるものになるのかを不明確にし,また指定されない他の部分の特定も不可能となり,遺産の全体を不分割の状態におくから許されないと解されている(『新版 注釈民法』421頁)。 「特定の財産は分割しないように」との遺言がある場合のとらえ方については,当該財産を特定の相続人の単独所有とし,その者の相続分は,他の遺産の取得額や債務負担等によって他の相続人との利益を調整するものと解される場合もあるから,遺産分割の禁止とは認められない場合もある。⑷ 分割禁止の対抗力 遺言者の分割を禁止するとの意思を実現するためには,不動産であれば,持分の特定承継人に対抗するために登記を備えなければならない。相続人全員の合意があれば,分割を実行することができる。 共同相続人は,5年以内の期間を定めて,遺産分割をしない旨の契約をすることができるが,その期間の終期は,相続開始の時から10年を超えることができない(民908条2項〔新設〕)。そして,この契約は,5年以内の期間を定めて更新することができるが,その期間の終期は,相続開始の時から10年を超えることができない(民908条3項〔新設〕)。 家庭裁判所による分割禁止の審判においても,5年以内の期間を定めてその分割を禁ずることができる。ただし,更新によっても最長で相続開始の時から10年を超えることができない(民908条4項・5項〔新設〕)。 最長10年とする期間制限を設けたのは,具体的相続分の主張制限規定が設けられたこと(民904条の3)を受け,遺産分割の禁止期間においても終期を明らかにするためである。

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