(試し読み)家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務(第4版)
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×①D債権者7 特定財産承継遺言による債権承継と対抗要件 被相続人Aは,「甲地を妻Wに相続させる」との自筆証書遺言を残して死亡した。相続人は,妻Wと子Bである。Wは,前記遺言により,甲地の権利を取得したが,Bの債権者であるDは,Bに代位してBが法定相続分(2分の1)により甲地の権利を相続した旨の登記を経由した上,Bの持分に対する仮差押え及び強制執行を申し立て,これに対する仮差押え及び差押えをしたことから,Wは,この仮差押えの執行及び強制執行の排除を求めて第三者異議訴訟を提起した。Wの請求は認められるか。※ 法定相続登記後の発行手続の簡略化(単独申請)による更正登記が可能となるのは,前記①特定財産承継遺言のほか,②遺産分割の協議,審判又は調停による所有権の取得に関する登記,③他の相続人の相続放棄による所有権の取得に関する登記,④相続人が受遺者である遺贈による所有権の取得に関する登記とされている。詳細については,荒井・244頁を参照されたい。542 第21章 特定財産承継遺言(被相続人)B③代位甲地を妻Wに相続させる②死亡④第三者異議訴訟仮差押(相続登記経由)AW設例21−6特定財産承継遺言と第三者対抗問題②【解 説】 Wの請求は認められない。改正法(民899条の2)により,相続を原因とする権利変動について,これによって利益を受ける相続人Wは,登記等の対抗要件を備えなければ法定相続分を超える権利の取得を第三者Dに主張することはできない。⑵ 相続関係の登記手続の簡略化(単独申請) 令和3年改正に基づく不動産登記実務の運用は変更され,登記権利者は,法定相続登記がされている場合であっても特定財産承継遺言による所有権の取得に関する登記を単独申請により,更正登記として行うことができると解される。⑴ 特定財産承継遺言による債権承継における対抗要件 特定財産承継遺言により法定相続分を超える債権の承継がされた場合,受益相続人は民法467条に規定する①譲渡人に相当する「共同相続人全

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