入法
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ちょっと一言査,特別審理官への口頭審理請求,法務大臣への異議の申出,さらに,退去強制手続においては在留特別許可の申請など手続対象者である外国人に広範な主導権が与えられている点に特色があります。その結果,入管法が退去強制手続に関する規定を多数有することになっていますが,それは,外国人の人権及び利益を保護するための当然の帰結なのです。 本文で引用した異説について一言付け加えます。仮に所論が正しいとするならば,公立学校制度の中心も退学・放校処分ということになります。というのは,アメリカの移民法学説の中には,入国者の選別は,公平である限り,公立学校の入学と全く同様に許容されるとの説が存在するからです。*36確かに,難関を超えて入学を許され,学業を継続する者の中には退学・放校処分に至る者もいるでしょう。だからといって,国公立大学の中心は退学・放校処分にあるというのは論理の飛躍であり,入管法でも同じことです。 入管行政関係に関する情報が一般に流布するのは,報道や判例評釈による場合が多いようです。その多くは上陸拒否,退去強制及び裁判に関するものです。因みに,コロナ以前の2019(令和元)年の数値では,入国外国人約3000万人に対して上陸を拒否された者は約1万人,在留外国人約300万人に対して退去を強制された(送還された)者も約1万人で(参照:入管庁サイト「令和2年のプレスリリース」),入管関係の裁判終了件数は約250件(入管庁「2022年版 出入国在留管理」2022年184頁)です。報道や評釈の対象となる事案は僅か数件です。唯一の孤立した例外の過大視(exaggeration of an isolated exemption)ではなく全体をご覧いただいたうえでの議論が必要です。*35 小畑郁「日本の外国人法史における『在留資格』概念の肥大化」広渡・大西前掲書(19頁注15)80頁第8章 退去強制176

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