新成年後見における死後の事務
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4第 1 編 死後事務に関する理論① 民法873条の2の柱書理行為ができなくなります。また当然のことながら,後見人は相続人の代理人ではありません。 任意代理であれば,判例は委任契約に関して,例外的な扱いを認めています3)。しかし,法定代理では,規定がなく死後事務の関しての根拠を欠く状態でした。本改正によって,死後事務は成年後見人の権限に含まれることを明らかにしたと言われています4)。⑴ 民法873条の2 民法典に新たに規定された民法873条の2は以下の規定です。 第873条の2  成年後見人は,成年被後見人が死亡した場合において,必要があるときは,成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかなときを除き,相続人が相続財産を管理することができるに至るまで,次に掲げる行為をすることができる。ただし,第三号に掲げる行為をするには,家庭裁判所の許可を得なければならない。一  相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為二  相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る。)の弁済三  その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為(前二号に掲げる行為を除く。) 本改正条文は,議員立法によるものであり,法制審議会でその内容が検討されていません。⑵ 民法873条の2の立法担当者の解説 柱書に規定された死後事務の要件を整理すれば以下のとおりです。 ⅰ死後事務の必要性,ⅱ相続人の意思に反しないこと(なお,「『相続人が存在しないか,又は相続人の存否が不明である』場合や,『相続人は存在するものの,その所在が不明,若しくは連絡をとることができない』場合については,『成年後見人の相続人の意思に反することが明らかなとき』には該当しないと考えられる。」5)と記されています。),ⅲ相続人が相続財産を管理することができるに至るまで(「基本的には,相続人に相続財産を実際に引き渡す時点までを指す」と説明があります6)。)です。

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