第6章1学校設置者・子どもの側のどちらから考えても、係争の相手方となる結果、教員を中心とした研究がされにくかったといえる。 また、②学校・教育問題は、悩みを抱えている子どもの権利の側から検討されるため、子どもの権利を守るために教員ができること、学校側にやってほしいことについては検討されるが、その中で、どの範囲までが教員の法的義務なのかについてはあまり検討されていない。 それに加え、③現場の教員と法律家の間に忌憚のない意見交換の場が少ないため、教員目線で求められるリーガルサポートについて法律家が学ぶ機会が少ないことなども指摘できよう。 いずれにしても、子どものために何ができたか(道義的責任)ではなく、その場にいた教員が、出来事があった当時の事情の下、どのような準備・対処をする法的義務を負っていたかという観点での、教員目線からの危機管理に関する研究はまだまだ途上にある。 そして、十分な先行研究・資料がないまま、法律家も個々の事案に対処することになるため、ついつい先生方の「○○をしておくべきだった」「○○をしていれば防げた」という道義的責任から来る「べき」(やった方が良かった、やれたら良かった)に惑わされ、学校に落ち度があるとの判断に至りがちである。そのため、法的義務(安全配慮義務)があったかどうかなど、普段、債務不履行責任・損害賠償責任を検討する際に当然に議論されることについての検討が十分にされないまま、学校にはまだやれることがあった以上、落ち度(法的な義務違反)があったとの判断が示される例が少なからずある(第3章145頁参照)。 このような状況を改善していくには、教育現場からの情報提供のあり方を改善することが不可欠である。弁護士も、いわゆる六法の基本を学んだだけで、様々な業界の問題解決に必要な個別の法律や事業や活動の内容をあらかじめ知っているわけではない。むしろ現場にいる学校における法律問題の現状と課題
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