章1そうおっしゃるなら……」とクレームが収まることもあるので、そのような展開に期待したい気持ちも分かる。 しかし、クレームを入れる側が、「校長と話したい。」という理由を考えてほしい。一つは、「ボスと勝負させろ。」というものである。その状況でいきなり校長につないでは、闘う気満々の相手と、事を荒立てたくない校長との対決となり、校長の劣勢は目に見えている。そして、校長が折れて何らかの約束をしてしまえば、事態は回復のできない悪い方向に行く可能性が高い。決裁権のあるトップは、あまりクレーム対処に向かないのである。 それから、もう一つの理由として挙げられるのは、「校長だったら、こちらの言っていることの方が正しいと分かるだろう。」という相手の期待である。この場合も、その相手の期待に応えられるようであれば、担任レベルで話しを収められるのが通常である。応じられない要求が出ているから話しがこじれているわけで、校長としても、その期待に応えることは難しい。その結果、期待を裏切られた相手は、より強い不満を感じるのであり、よりこじれたり、大ごとになりやすい。 これらに加え、校長にしても、報告を受けているとはいえ、出来事の細部や関係者のやりとり全部を把握しているわけではないので、適切な受け答えができるとは限らない。そして、そういった曖昧な理解の下で校長がした発言が必ずしも適切でない場合には、誰がそれを訂正するのかという問題にも突き当たる。学校としては、校長を出したことで、いきなり背水の陣となることもあれば、校長の発言を逆手に取られて、現場の身動きがとれない状態に陥るおそれがある。 校長は、学校がすべき対応について、最終的な判断をすべき立場にあるのであって、そこに至るまでの意見や事実関係の整理なども含めた個別の交渉に向いているわけではない。むしろ発言に重みがある第学校における法律問題の現状と課題12
元のページ ../index.html#34