全訂 新しい家族信託 (試し読み)
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31 信託は難しい、だから分かりやすい解説が必要⑴ 我が国では、信託制度を理解している人は少ない。 多くの人は、信託とは何か、家族信託とはどのような制度かと疑問を抱き、一度説明を受けてもすぐにはこれを理解することができない。信託という制度は奥が深く、しかもこれまでの生活の中で、一般に活用される文化がなかったからである。 信託とは、ある人(「委託者」という。)が、自分が有する一定の財産を別扱いとして、信頼できる人(「受託者」という。)にその管理を託して名義を移し、この託された人において、その財産を一定の目的に従って管理活用処分し、その中で託された財産や運用益を特定の人(「受益者」という。)に給付しあるいは財産そのものを引き渡し、その目的を達成する法制度である。初心の方には、信託について、このように説明して理解していただいている。 本書で紹介する家族信託とは、「家族のための民事信託」であり、広く財産を「守る」「活かす」そして「遺す」という法的な仕組みを一つの制度で達成するというものであり、遺言や相続、あるいは成年後見制度等に代替等する機能を有している仕組みである。 これまでの法制度では、財産を「遺す(承継帰属させる)」という法的仕組み(「遺産の承継(財産承継)」)は、一般には遺言や相続、あるいは贈与などの法制度によって、また家族の中で判断能力等が不十分な人の財産を「守る(管理する)」「活かす(活用する)」という法的仕組み(「後見的な財産管理」)は、多くは成年後見制度や任意の財産管理等委任契約によって達成されてきた。これらの制度に代替す1 信託は難しい、だから分かりやすい解説が必要第1 はじめに

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