i 40年ぶりに相続法が改正されて、大事な遺言が絶対的効力を失った。 改正相続法は、相続財産である不動産につき、いわゆる「相続させる遺言」を作成し遺したとしても、共同相続人による相続登記が単独ででき、当該相続持分につき第三者に譲渡等した場合、その第三者が善意のときはもはやその部分の遺言は意味をなさなくなってしまうのである。 「遺言があれば大丈夫」という時代は終焉を迎え、「資産の安心安全な承継は家族信託以外にない」という時代が到来したともいえる。 しかし、一方的に喜んでいる場合ではないようである。この家族信託が一部士業の人やコンサルタントの人たちによって奔放野放図に組成されてきた悪しき影響が、学者や一部法律家によって指摘され、しかもこれが顕現し現実に訴訟が提起されるなどしているからである。この家族信託支援業務の問題の多くは、法令実務精通義務遂行能力を欠く専門家と称する人が、信託の組成に当たり、法律、そして家族信託の本質や成立要件など基本的ルールを守ろうとしなかったことにある。 今一度、家族信託とは何かを考えるべき時に来ていると思う。 信託の定義を読んでいただきたい。そこにあるのは、信託は受益者のために、と書いてあるはずである。今日、信託の本質ともいえるfiduciary dutyに裏打ちされた信認関係のない信託契約書が数多く出回り、これが訴訟の場に顕出され、さらに信託組成者の責任追及が待ち受けていると、良識ある法律家は言い出している。 これらは、筆者が長年訴えてきている「正しい 生きる信託」を実現することが大事であるとの言葉に耳を貸さずに、営利に走り、機能しない「信託もどき書契」を世に出したことへの報いでもある。そう全訂にあたって全訂にあたって
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