全訂 新しい家族信託 (試し読み)
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398けた遺言(遺言信託)の事例である。このような高齢者を取り巻く財産管理に関する相談事例は多いのではなかろうか。いわゆる「配偶者(伴侶)なき後の問題」である。 家族信託があれば、高齢者や障害者の支援はすべて十分という者がいるが、信託というのはそのような制度ではない。家族信託を利用するうえで大切なのは、信託制度だけではなく、遺言、それに成年後見制度を同時並行して正しく活用することである。認知症の高齢者にあっては、成年後見人等による支援は不可欠であるが、可能であれば任意後見人を活用したい。 また、高齢者の遺言も大変大切である。委託者の財産のすべてが信託財産となるわけではない。公的年金のように個有財産として扱われて遺産に残るものもあるので、いわゆる争族を防止するためにも遺言は不可欠である。しかも遺言は遺留分の問題解決のため(参考文例19参照)、あるいは追加信託(注ぎ込み信託:参考文例14)等で紹介しているように、信託との関係でも大切な役割を果たすのである。かかる基礎知識のない組成者の文案を見ると、「受託者は、委託者のすべての金融資産について管理処分できるものとする」とか「清算受託者は、委託者死亡時委託者の信託財産になっていないすべての財産を信託財産として追加信託する」という条項すら登場する。注意が必要である。⑴ 参考文例1(受益者は認知症の配偶者1名の、遺言信託) この文例は、上記1の⑵で紹介した事例を基にしたものである。 なお、遺言その他の条項は省略している。第1 高齢者福祉型信託2 福祉型信託と遺言、それに成年後見制度3 活用事例

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