全訂 新しい家族信託 (試し読み)
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あとがき563 信託制度は、私たちの生活を支える広がりのあるしかも懐の深い制度である。 信託は、基本的な仕組み、それに信託の本質に反しない限り、当事者が望むいかなるスキームでも設計できる広遠な制度である。それは、単なる平面的な変化に富んだ制度というものではなく、民法の考え方では構成できない法律構成もできるなど、奥が深い法制度なのである。 信託は、特定の人が、特定の財産の管理や活用について、達成したい目的があれば、さまざまな選択肢があり、しかも他の法制度と組み合わせも可能なのである。特に、家族信託においては、保護を必要とする配偶者や子のために信託を利用したいときには、それを実現できる信託の仕組みや組み立て方は一つに限らないということ、すなわち信託行為の中でいくつかの選択ができる仕組みがあり、しかもスキームの組み立て方もそれぞれのニーズに合わせることができるのである。そして、これを成年後見制度と組み合わせることもでき、さらには成年後見制度の中でこの信託を活用することもできるのである。 しかし、信託であるとして何もかもできるわけではない。ときには、信託が禁止されたという歴史があることを振り返って見ることも必要である。 しかも、信託を創造しアドバイスする専門職の方の倫理観も問われることもあろう。信託では、当然守らなければならないルールがあるのである。できない信託である脱法信託、訴訟信託、詐害信託や名義信託だけでなく、やるべきでない信託(受益者の保護に欠けるスキームの信託や成年後見制度をないがしろにした信託など)も少なくないはずである。それが具体的に何であるかは、信託の普及を願う者でああとがき

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