新訂にあたってiii 今日、「遺言の時代」を迎えるとともに、「家族信託の時代」を迎えている。 信託は、その利用状況を見ると、今は商事信託の分野で大きくリードしている感がある。しかし、世に先駆けて「家族信託の活用が私たちの生活に大きく役立つ」と訴え、積極的に利用を始めたのは民事信託の分野であって、その利用は着実に増加し、その役割も商事信託に引けを取らない。 そのような状況の中、ここにきて私は、初版本で示した説明を二、三見直す必要があると考えるに至った。 その理由は、成年後見制度の硬直し始めた実務の運用にある。 家族信託は、遺言や相続制度に代替し、また一部で成年後見制度に替わる機能を有している。その成年後見制度が大きな曲がり角に立っているように思えるのである。 成年後見制度は、大事な制度である。この法制度は、主として高齢者が自分のことが自分でできなくなった場合、自分のことを後見人に託して権利を擁護してもらうという、極めて重要な制度なのである。他の法制度で、これを全て代替する仕組みのものはなく、特に高齢者にとっては、不可欠な制度である。 その成年後見制度の現状を見ると、本来の理念である「本人の意思を尊重し、本人自身の福祉や権利を確実にかつ適正に確保する」という方向性が時として失われているように思える。それは、後見制度支援信託制度の運用を見ても明らかである。本人の財産が異常と思えるほど固定化され、しかも尊重されるべき本人の意思や残有能力の活用の場を見出すことが難しくなっているように思う。 そこで、これらの分野でかなりの部分を補完できる家族信託につい新訂にあたって
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