1 「法律事務」というと,一般的には堅い・難しいという印象があるようです。特に決まった定義はなく,法律に関連する事務もあれば,法務局・市区町村役場その他公的機関に対する書類請求などの事務,銀行・信用金庫などの金融機関,消費者金融が関連する事案の処理,依頼者に対する連絡その他雑事まで,法律事務所によっても様々です。ただ,どの法律事務所でも共通していることは,裁判所に係属している(民事・家事・刑事などの)事件について事務を行うということです。これは弁護士(認定司法書士が簡易裁判所の事件を扱うことはあります)が行うものですから,自ずと法律事務所に勤務する事務職員にも,裁判所で扱われる事件等についての知識・事務手続の方法などを知っておくことが要求されます。 平成24年度の司法統計によると,全国の裁判所(最高・高等・地方・簡易各裁判所)で扱われる民事・行政事件の合計は新規受付の事件が約170万件,その年の未済・既済事件は約220万件あり,地方裁判所だけをみても,新規受付の事件が約70万件,未済・既済事件は約100万件あります。これらの事件の内訳は,貸金返還請求事件(「貸した金を返せ!」の事件),売買代金請求事件(「代金を払え!」の事件)など,いくつかに分類はできても,その内容はそれぞれで異なります。 法律事務所では,どのような依頼者からどのような事件の依頼を受けて,どのように処理するかは弁護士が決めるので,その法律事務所に勤務する事務職員としては,たとえ自分の知らない分野であっても,なんらかの方法で調べて,勉強して,柔軟にこなしていかなければなりません。 しかし,法律事務,特に法律事務職員の仕事についての書籍は,手引書のような冊子を発行している各都道府県の単位弁護士会(もしくは弁護士協同組合)がいくつかありますが,一般には,あまり数多く出版されておらず,多くの法律事務職員が抱える悩みの1つになっています。はしがきはしがき
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