コラム弁護士が複数在籍している事務所では? 弁護士法人や大・中規模事務所のように複数の弁護士が在籍している事務所,小規模の事務所でも2人以上の弁護士が在籍している事務所では,1枚の委任状に弁護士の名前を連記していることがあります。市販されている委任状や書式集に掲載されている委任状の形式では,弁護士1名分の名前を書くスペースしかないので,複数の弁護士の名前を記載することに違和感を感じる人がいますが,複数の弁護士の名前を記載しても,委任状の効力自体には問題はありません。「訴訟委任状」と「委任状」の違いは? 法律事務所によっては,委任状の表題が「訴訟委任状」となっているものを使用している事務所と,表題が「委任状」となっているものを使用している事務所があるようです。どちらを使用するかは,その事務所の弁護士の好みでしょう(と言ってしまえば身も蓋もないのですが)。とある事務所の事務職員の話ですが,その事務所では表題が「訴訟委任状」となっているものを使用していたところ,相手方の弁護士が裁判所に提出した委任状を謄写したら,表題が「委任状」となっており,これをみた事務職員は,「この委任状は無効だ」と思ったそうです。 厳密にいえば,「訴訟委任」とは,「特定の民事事件について,訴訟代理権を授与する行為」ですから,交通事故や債務整理で相手方と交渉するときのように,訴訟代理以外の代理人となる場合は,訴訟委任にはあたらないことになってしまうのかもしれません。しかし委任状は,弁護士が依頼者からの依頼を受けて仕事をしていることを証する書面ですから,訴訟以外の交渉の依頼を受けたが委任状の表題が「訴訟委任状」となっているからといって,その委任が無効になることはないでしょう(委任の事実は厳然として存在するのですから)。 訴訟以外の交渉で代理人となるときでも,相手によっては,委任状を要望第Ⅱ章 民事訴訟と提出書類28
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