11_面審
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理人を通じて面接の申入れをするも,父は離婚調停時に面接交渉の確約はなく,逆に清算条項(後述)があるとして面接交渉を拒否した。 同年7月母は長男との面接交渉を求める調停を申し立て,父は第1回調停期日に出頭せず,上申書を提出し,①誠実に長男を監護養育している,②父再婚後も義母,義兄弟とも円満な生活状況下にあり,実母との面接交渉は長男の幸福な生活を乱し福祉を害すおそれがあるため,受け入れられないと主張した。 調査官が相手方父の意向調査と次回期日の出頭勧告をし,同年9月の第2回期日に父は後妻とともに出頭し,上申書と同じ考えであり,今回の申立ては申立人母が相手方家族へ干渉・妨害する意図を有し長男の福祉が害される,以後調停期日には出頭しないと述べ,同年10月の第3回期日に相手方父不出頭により,調停不成立・審判移行となった。 家裁の認容審判に対し父が抗告し,抗告審では抗告を容れて原審判を取り消して,面接交渉の申立てを却下した。 ここに問題となるのは,本件申立人母のごとく,離婚後親権もしくは監護権を有しない親が未成熟子に対し面接ないし交渉の権利を有するか,また有するとして,その親が面接ないし交渉権を行使するため必要な事項について他方の親権もしくは監護権を有する親との間に協議が調わず又はできない場合に家庭裁判所が審判をすることができるかということである。けだし,我が民法は多くの国の立法例のように,この親権もしくは監護権を有しない親の未成熟子に対する面接ないし交渉に関する明文の規定をおいていないからである。 しかしながら,裁判所は,この「未成熟子に対する面接ないし交渉は,親権もしくは監護権を有しない親としての最低限の要求であり,父母の離婚という不幸な出来事によって父母が共同で親権もしくは監護権を行使することが事実上不可能なために,一方の親が親権者もしくは監護者と定められ,単独で未成熟子を監護養育することになっても,他方の親権もしくは監護権を原審審判理由16  第2章 裁判例概観

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