18 第2章 裁判例概観出頭せず,調停の際における相手方父の主張には変更がないものとみる)ので,この主張の当否につき検討する。 調査官調査及び申立人審問の結果によれば,相手方父主張のごとく,相手方父は長男を申立人母から引き取った後,誠実に長男の監護養育に努めており,昭和39年3月相手方父と婚姻した後妻も長男の面倒をよくみており,長男も後妻によく懐いており,また後妻の連れ子2名(17歳男,15歳男,いずれも同年5月相手方と養子縁組)とも仲が良く,相手方父の家庭に十分適応し一応幸福に暮らしていることを認めることができるが,それだからといって申立人母と長男との面接が直ちに長男の福祉を害することになるとは考えられない。 相手方父が本件調停の際に自ら述べていることであるが,相手方父が長男に対し後妻が真実の生みの母親であり,ある事情があってこれまで申立人母に育てられていたと言い聞かせてあること等からすると,相手方父が長男を申立人母と面接させることにより,長男の心を動揺させることになりはしないかと考えるのももっともであるが,かく相手方父が長男に言い聞かせたことの当否は別としても,6歳まで申立人母とともに生活してきた長男が果たして相手方父の言をそのまま真実であると思っているかどうか疑わしいのみならず,仮に長男が相手方父の言をそのとおり信じており,申立人母と面接することにより多少心の動揺があるとしても,申立人母と別れて相手方父に引き取られた際の経緯等からして申立人母との面接により受ける利益と比較考慮するときは,直ちに長男の福祉が害されるとは認め難い。 したがって,申立人母との面接により長男の心が動揺し,その福祉が害されるとの相手方父の主張は理由がない。 また関係事件記録等によって窺われる申立人母と相手方父との離婚に至るまでの経緯からすると,相手方父が申立人母が長男との面接にかこつけて相手方夫婦親子の生活に干渉し又はこれを妨害する意図を有するのではないかとの疑念をもつのも分からないではないが,申立人母に対する審問の結果によれば,申立人母はかかる意図を有するものではないことを強く表明しており,裁判所も申立人母の言を信ずるものであり,他に申立人母がかかる意図を有することを認めるに足る証拠もない。
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