との疑念を抱いていること並びに申立人が有する事件本人との面接権の行使は事件本人の福祉を害しない限り認められるものであることにかんがみ,事件本人との面接に当たっては,その福祉を害することがないよう慎重に行動することを望むものである。」とした。 「また,相手方に対しては,申立人の事件本人に寄せる愛情,並びに事件本人が恐らく申立人に対し抱いていると推測される思慕の情等を考慮し,当裁判所の審判に従って,申立人と事件本人との面接を認めることを望むものである。ただ,相手方がどうしても本審判に服しがたければ,上訴審の判断を仰ぐことももとより自由であるが,若し本審判が確定したにかかわらず,これに従わないならば,家事審判法第15条[現・家事法75条,268条1項等]および民事訴訟法第734条[現・民執法172条]により間接強制が命ぜられるし,またこれに従わないことは監護者変更の一つの理由となることを付言する。」とした。 抗告審は,父(抗告審抗告人=原審相手方)からの即時抗告に対し,以下のように判示して原審判を取り消し,母(抗告審相手方=原審申立人)の面接交渉の申立てを却下した。 父の本件抗告理由の要旨は,「抗告人および後妻は事件本人を深い愛情をもって養育し,事件本人もまた後妻を本当の母親の如く慕い幸福に暮らしている。然るに事件本人を相手方に会わせることになれば,それが月に一度であってもまた家庭裁判所調査官の立会の上であっても,後妻と相手方との葛藤に事件本人を巻き込むことになるのは必定で,かくては事件本人の幼い心を傷つけその成長に大きな弊害を与えることとなる。相手方が事件本人に会いたいというのは利己的な感情からであって,そのために事件本人を犠牲にすることはできない。相手方を事件本人に会わせることとした原審判は不当であるからこれが取消を求める。」というにある。 これに対し,抗告審決定は,「思うに,実の母が我が子に面接することは本来ならば何人にも妨げられないはずである。しかし未成年の子が何らかの抗告審決定理由20 第2章 裁判例概観
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