う趣旨であることは,その文理上出てくる当然の結論である。このことは既に旧版で明確に指摘していたのであるが(本書4頁参照),このような解釈を前提とした「新運用モデル」を新たに構築しなければならないということである。 新版では,全体の頁数を必要最小限に抑えるため,旧版で紹介した裁判例【1】から【93】までをかなり圧縮し,新登載の裁判例【94】から【129】の分についても,重要部分に限った(内容については,分かりやすくするため表現等は修正してあるので,原文が必要なときは引用判例集に直に当たっていただきたい)。 新版の内容は,第1章「問題の所在と学説・裁判例の動向」で本書の全体像を眺め,第2章「裁判例概観」で昭和39年の裁判例【1】から平成30年の裁判例【129】(裁判例【126】の控訴審【127】については平成31年)まで面会交流に関する裁判例の概略を紹介し,第3章で「裁判例の分析と原則的実施論の問題点」を指摘し,第4章で「面会交流調停・審判の在り方」を論じている。新版は旧版と同様に,面会交流の調停運用は,従来の最高裁判例が前提とする「比較基準説」に基づくべきであるとしたものであるが,新モデルはいわば原則的実施論から比較基準説に基づく運用に立ち返ったものである。その意味では,旧版が面会交流実務を動かしたことになるがこの新版が今後の実務の在り方を更にリードしていくことになるものと信じる。読者の方々からの真摯なご批判をお願いしたい。 私事で恐縮だが,旧版のはしがきで触れたように各章の表裏のカット絵は当時の妻梶村慶子の作によるものであるところ,妻は令和元年12月4日78歳の生涯を閉じた。本新版を亡き妻慶子に捧げることをお許し願いたい。 新版を上梓するに当たっては,裁判例の収集や取捨選択を初め,第1章,第3章及び第4章の中身の点検精査等について,旧版と同様に,日本加除出版編集部の山口礼奈氏に並々ならぬ支援を受けた。細部にわたって気を使っていただき,この新版は実質的に山口氏との共著と言っていいくらいだと思っている。このことを特記して謝意を表したい。 令和2年9月ii はしがき梶 村 太 市
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