法農
46/64

166このような事態を避けるためには遺言等による農業継承者へ経営資産を一括で相続させるような対策や、生前の一括贈与制度の利用などを検討していく必要があります。そして、農地の権利移転が主として相続により引き継がれている実態を考えると、相続が終われば経営継承は完了したと考える方も多いものと思われます。したがって、個人農家の事業承継においては相続に関わる対策、手続、税金等を知ることが非常に重要となってきます。また、経営資産の継承に係る税負担についても、いつ、誰が、誰に、何を、どのような方法で資産移転するかで課税関係が異なります。法人化した方が良いのか、生前贈与するのか、または相続まで待つのかなど経営承継においては基本的な税制を理解した上で対策を講じる必要があります。経営資産の承継を考える上で生前に事業承継者へ贈与するか、相続まで先延ばしするかは農業経営者が頭を悩ませる問題です。税負担の観点から考えると承継する経営資産が相続税の基礎控除以下である場合は承継する資産に対して相続税はかかりません。また、農業を承継する農業相続人がいる場合は市街地農地など相続税評価額が高額となるような農地を所有していても相続税納税猶予制度を適用し、農業を続ける限り課税を将来に渡り繰延べる又は免除する制度があります。反面、農業相続人がいない場合は相続税納税猶予制度の適用が受けられず、多額の税負担を強いられる可能性があります。いずれにせよ、農業経営者が事業承継や廃業を考える上で自身が所有する財産はどの程度の価値があり、現状ではどのくらいの相続税負担となるのか頭に入れておく必要があります。2.相続による農業経営承継

元のページ  ../index.html#46

このブックを見る