子紛
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事案のポイント決定理由第7 令和裁判例/219 間接強制執行抗告審取消決定に対する許可抗告  341 抗告人妻が,その夫である相手方に対して両名の長男を抗告人に引き渡すよう命ずる審判を債務名義として,間接強制の方法による子の引渡しの強制執行の申立てをした事案である。執行抗告審は,子の引渡し拒否を理由として間接強制の申立てが権利の濫用であるとしたのに対し,許可抗告審は権利の濫用にはならないとした。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。なお,裁判官長嶺安政,同渡邉惠理子の補足意見がある。 裁判官長嶺安政,同渡邉惠理子の補足意見は,次のとおりである。 私達は,法廷意見に賛同するものであるが,原決定の理由につき思うところを述べておきたい。 原決定は,本件返還決定が子らの常居所地国であるフランスの第1審裁判所がした子の監護に関する裁判(本件本案判決)に反することを理由として,本件申立ては本件本案判決が仮の執行力を有する間は権利を濫用するものとして許されないという。しかしながら,外国における子の監護に関する裁判(しかも,いまだ確定もしていない。)がされたことのみを理由として子の返還の強制執行を許さないとすることは,仮に原決定が指摘するように上記裁判が適正な審理の下に行われたものであったとしても,国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)の目的,同条約17条及びこれを受けて定められた実施法28条3項の趣旨に反するおそれがあるものと思料する。」最決令4・11・30裁時1805・3 「記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。  ⑴ 抗告人と相手方は,平成24年に婚姻し,平成25年2月に長男を,平成27219 間接強制執行抗告審取消決定に対する許可抗告

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