342 第2章 子引渡裁判例の全容年10月に二男をもうけた(以下,上記の子らを併せて「本件子ら」という。)。 ⑵ 相手方は,抗告人及び本件子らと同居していたが,令和2年8月,本件子らを連れて転居し,抗告人と別居した。 ⑶ 和歌山家庭裁判所は,令和2年12月,抗告人の申立てに基づき,本件子らの監護者を抗告人と指定し,相手方に対して本件子らを抗告人に引き渡すよう命ずる審判(以下「本件審判」という。)をした。本件審判は,令和3年3月29日に確定した。 ⑷ 抗告人は,令和3年4月5日,本件子らの引渡しを受けるため,相手方宅に赴き,二男についてはその引渡しを受けた。他方,長男については,抗告人及び相手方からの約2時間にわたる説得に応ずることなく,抗告人の下に行くと相手方と会えなくなると述べたり,長男を抱えようとした抗告人を強く押しのけたりするなどして,抗告人に引き渡されることを強く拒絶したため,抗告人は,その引渡しを受けることができなかった。 ⑸ その後,相手方は,抗告人に対し,長男が抗告人を怖がっていることから長男の引渡しについて具体的な提案をすることができないとした上で,長男と二男を面会させる機会を設けることを提案した。抗告人は,これに応ずることとし,相手方との間で,令和3年5月30日に長男と二男を面会させることを合意した。 相手方は,同日,長男を連れて上記の面会の待ち合わせ場所に赴いた。長男は,抗告人が上記待ち合わせ場所に来ることを知らされていなかったため,抗告人の姿を見て強く反発し,抗告人のことは全部嫌だなどと述べ,抗告人に抱かれることを拒否し,泣きながら相手方に対して相手方宅に帰ることを強く求めるなどした。 ⑹ 抗告人は,令和3年6月9日,本件申立てをした。 原々審は,同年7月13日,相手方に対し,長男を抗告人に引き渡すよう命ずるとともに,これを履行しないときは1日につき2万円の割合による金員を抗告人に支払うよう命ずる決定(原々決定)をした。 相手方は,同月26日,原々決定に対し執行抗告をした。相手方は,抗告の理由として,長男が抗告人に引き渡されることを明確に拒絶する意思を表示していること等からすれば,本件申立ては,間接強制決定をするための要件を満たさず,又は権利の濫用に当たる旨主張した。 3 原審は,要旨次のとおり判断して,原々決定を取り消し,本件申立てを却下した。 長男は,令和3年4月5日及び同年5月30日の2回にわたり,抗告人に引き渡
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