第1子引渡請求民事訴訟第1 子引渡請求民事訴訟 3491 子の引渡請求の訴訟物(引渡請求権か,妨害排除請求権か) 子引渡請求の民事訴訟は,民法親族編に定められた子に関する実体法上の権利の請求手続である。そこで,その手続や事件の性質すなわち訴訟物が問題となる。裁判例は,まず子引渡請求訴訟の訴訟物をめぐって展開され,次に引渡請求と子の自由意思との関係が論じられた。以下では,戦前の裁判例から,年代を追って見ていくことにしよう。子引渡認容判決がほとんどであるが,訴訟上の和解事案もある。当然のことながら,子引渡しの民事保全のケースも多い。⑴ 戦前の判例 旧民法(明治民法)879条・880条においても,現行民法820条・821条と同じように,親権の効力として,監護・教育の権利義務や居所指定権を定めていたが,戦前の旧民事訴訟法の時代にも,既に明治時代から親権に基づく子の引渡請求権の存在を認め,第三者に対する子の引渡請求訴訟を肯定していた。 その訴訟物に関しては,当初は監護教育権が親権者に属する対世的権利であるから,子を奪い去って監護教育権を侵害する者に対して,親権者は子の引渡しを請求することができるとしていた。例えば,大判大7・3・30[裁判例4]は,親権の効力たる子の監護教育権は親権者に専属する対世的権利にして,親権者はその目的たる未成年の子に対してこれを行うことを得ると同時に,何人といえどもこの行使を妨げ及びこれを侵害することができないものであるから,本件のように親権者の手よりその子を奪い去りその監護教育権を侵害した者がある場合において,親権者はこれに対してその子の引渡しを求め,もって親権の行使を全うすることを得ないとすることはできない。この意義において侵奪者は親権者に対しその子を引き渡す義務を負うものであり,物でなければ給付の請求をすることができないというものではないことは当院判例の認めるところであるとして,大判大元・12・19[裁判例2]
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